1人区で11勝するなど野党共闘は一定の成果を上げるも、改憲勢力が3分の2をしめる結果に終わった参院選。このタイミングで読むと、まことに味わい深い。『リベラル再起動のために』。北田暁大、白井聡、五野井郁夫という当代きっての若手・中堅学者が、今日の政治状況についてざっくばらんに語り合った鼎談集だ。
たとえば野党共闘について。
白井〈共産党と他の政治勢力の関係が背負ってきた不毛な歴史に、われわれの時代は邪魔をされていると思いますね〉。北田〈共産党の負の歴史を、嫌というほど学んできてますからね〉。白井〈そう見えてしまう世代が、もはや間違っているのではないですか?〉〈あちらからすれば、力を結集できない左派なんて、実にチョロいもんだと見えることでしょう〉
あるいは選挙戦術について。
五野井〈与党がやっているようなことを野党も嫌がらずやらないと、当然負ける〉。北田〈やるべきことは、手を握ること〉。五野井〈それが誠実さとされているんだから〉。北田〈だけど、私が怖いのは、白井さん的に話をすると、手を握られて喜んでるおっさん、おばさんとか、単なるバカということになる。でも、彼・彼女たちなりの合理性があると思うんですよ〉。白井〈ないですよ、もう〉。五野井〈握手だって、してもらえれば嬉しい人は嬉しいようですよ〉。白井〈握手してもらって腹は膨れるのかという問題です〉
〈端から見れば、北田さんがリベラル派、私が左翼、白井さんが極左という色分けでしょうかね〉(五野井)というだけに(?)、白井氏の切って捨てるような一言が最高。
民進党の〈覚悟が固まっていない中間派と右派は、しょせん、(米国の)傀儡の二軍ですよ〉。国立大学への「君が代」の強制について〈自民党の人たちはその支持者を含め近代人じゃないですからね〉。自民党の改憲案は〈劣化の極みで、ほとんど狂気です〉。
リベラル左派に期待すればこその辛口談議。巨人をこき下ろし、阪神にダメ出す虎キチの井戸端会議みたいなノリがおもしろい。
※週刊朝日 2016年7月29日号