一方で動物愛護の精神が強い海外では鞭の使用制限も厳しい傾向。欧米主要国はレース全体で使用回数の上限を定めており、フランスでは4回、イギリスでは6回までとなっている。フランスでは1レースで9回使用した時点で即失格処分だ。

 実際にビッグレースで勝利を得るために制限を超えた鞭使用で処分を受ける例は多く、2023年7月の英G1キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスをフクムで制したジム・クローリー騎手は制限を3回超える9回の使用があったとして、勝利の代償に20日間の騎乗停止と1万ポンド(約180万円)の重い処分を科された。

 同年10月にはランフランコ・デットーリ騎手も英チャンピオンズデーでの2レースでルールに抵触し、計16日間の騎乗停止に。そのため予定していた豪G1メルボルンカップへの遠征断念を余儀なくされた。今年2月にはサウジダービーでフォーエバーヤングに騎乗した坂井瑠星騎手も鞭の使用回数を超過したため、サウジアラビアジョッキークラブ裁決委員から2日間の騎乗停止処分を受けている。

【レース中にまさかの肘打ち!?】

 2022年9月には日本でもおなじみのクリストフ・スミヨン騎手が、フランスでのレース中にライバルジョッキーへ肘打ちを食らわせて落馬させたとして60日間の騎乗停止処分を受けた。

 スミヨン本人は騎乗馬に右へ行くよう手綱で指示するために肘を出したところ、被害者となったロッサ・ライアン騎手に当たってしまった、と故意ではなかったことを説明。すぐに謝罪したが時すでに遅く、大馬主であるアガ・カーン殿下陣営との契約を解除されるという、ある意味では騎乗停止よりも重いペナルティを受けてしまった。

 なお幸いなことにこの件で落馬したライアン騎手は無傷で済み、翌年には英国リーディング3位と躍進。2年後の今年は同2位で、10月にはブルーストッキングとのコンビで仏G1凱旋門賞を制覇するという快挙を達成している。

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なかなか見られない“大量処分”