1974年に来日して以来、テレビやラジオ、紙面を通し、わかりやすい語り口で洋楽の普及に貢献、近年は自ら音楽フェス"LIVE MAGIC!"の監修もしているピーター・バラカンさん。

 その多岐に渡る活動のうち、ブルーズ、ソウル、ロックといった音楽への深い理解と、英語と日本語のどちらをも自由に行き来することのできる語学力という両者が見事に結実したのが、2003年に書籍化された『ロックの英詞を読む』。



 ひとつの楽曲を取り上げ、その歌詞を解説、英語のリリックには欠かせない韻をはじめとする技巧的なおもしろさはもちろん、言葉の背景にある歴史、人種差別、環境問題、政治的主張などを読み解いていくことで、私たちに数多くの発見を与えてくれました。



 このたび、その続編ともいえる『ロックの英詞を読む―世界を変える歌』が完全書き下ろしにて登場。より一層メッセージ性の強い楽曲を扱いながら、英詞の世界へと誘ってくれます。



 過去のアーティストたちの残した楽曲から浮かび上がるメッセージとはどのようなものなのか、そして現在の社会に通じる点はあるのか、さらに日本の社会や音楽業界の問題点とは。ビーター・バラカンさんにお話を伺いました。


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----『ロックの英詞を読む』のいわば続編という形で、今回刊行された『ロックの英詞を読む―世界を変える歌』。まえがきにて"本を出すタイミングはよかったと思います"と綴られていますね。



日本では、活字媒体より放送媒体の方が深刻かもしれませんが、いずれにおいても昨今は、表現の自由がかなり制限されています。テレビ局にもラジオ局にも、言いたいことがなかなか言えない雰囲気が漂っていることは否めません。僕もラジオでときどき、「今日は自主規制中です」なんて皮肉の一言をいうときもあるのですけれど(笑)。そのため、この本では、自分より表現力のあるソングライターたちの力をお借りしながら、世の中で起きているさまざまな問題に対してどのような意見が生じ得るのか、しっかりと伝えることができればと思いました。



----本書で取り上げられた全22曲は、イラク戦争、ヴェトナム戦争、反アルパトヘイト運動をはじめ、アメリカが辿ってきた歴史、そしてその歴史の渦中に生きる人びとに焦点が当てられています。



はい。そうした歴史的事実は知っていても、アメリカで暮らす人びとにとって、ときに歌にするほど、それらがどれほど大きな問題意識として常にあるのかというところまで、日本人の認識はなかなか追いついていないかもしれません。日本のメディアは、どうしても国内の事件ばかりに注目しがちですから、仕方のないことかもしれませんが。



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