気象庁は11日「エルニーニョ監視速報」を発表しました。それによりますと、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態と見られますが、「ラニーニャ現象時の特徴が明瞭」になりつつあります。今後、冬にかけてラニーニャ現象時の特徴が明瞭になりますが、春までは続かないため、ラニーニャ現象の定義を満たす可能性もあります(40%)。ただ、平常の状態が続く可能性の方が、より高くなっています(60%)。
10月の実況
気象庁は11日、エルニーニョ監視速報を発表しました。それによりますと、 10月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値からの差は-0.4℃で、基準値に近い値でした。
また、ラニーニャ現象発生の判断に使用している「5か月移動平均値」の8月の値は-0.3℃で、基準値に近い値でした。
「太平洋赤道域の海面水温」は西部で平年より高く、中部から東部にかけて平年より低くなりました。
「太平洋赤道域の海洋表層の水温」は西部で平年より高い一方、中部から東部では平年より低く、東部でも低温が強まりました。
「太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動」は平年より不活発で、「中部太平洋赤道域の大気下層の東風(貿易風)」は平年より強くなりましたが、これらには熱帯季節内振動の影響もありました。
このような大気と海洋の状態は、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態と見られるが、「ラニーニャ現象時の特徴が明瞭になりつつある」ことを示しています。
今後の見通し
実況では、太平洋赤道域の中部から東部で海洋表層の冷水が強まっています。
大気海洋結合モデルは、今後、太平洋赤道域の西部から中部で貿易風が強まるとともに中部から東部の冷水がさらに強まり東進するため、エルニーニョ監視海域の海面水温が冬は基準値より低い値で推移する可能性が大きいが、大気海洋結合の弱まりとともに春にかけて上昇して基準値に近づくと予測しています。
以上のことから、今後、冬にかけてラニーニャ現象時の特徴が明瞭になりますが、春までは続かないため、ラニーニャ現象の定義を満たす可能性もあります(40%)。ただ、平常の状態が続く可能性の方がより高くなっています(60%)。
ラニーニャ現象とは?
「ラニーニャ現象」が発生するのは、太平洋赤道域です。このあたりは貿易風と呼ばれる東風が吹いているため、通常、暖かい海水は西側のインドネシア付近に吹き寄せられる一方、東側の南米沖では、海の深い所から冷たい海水がわき上がっています。
ただ、何らかの原因で東風が強まると、西側の暖かい海水が厚く蓄積するとともに、東側にわき上がる冷たい海水の勢いが強まり、南米沖の海面水温が通常より低くなります。このように、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より低くなり、その状態が1年程度続く現象を「ラニーニャ現象」と呼びます。
「ラニーニャ(La Niña)」とは、スペイン語で女の子という意味で、「神の子キリスト」を意味する「エルニーニョ」の反対現象ということから名づけられました。
「ラニーニャ現象」は海で起こる現象ですが、発生すると大気にも影響を及ぼし、世界各地で気圧配置などがいつもとは違った状態になります。雨や雪の降りやすい場所や、風の吹き方、気温などが変わってくるのです。
ラニーニャ現象が発生すると、日本付近では、西高東低の冬型の気圧配置が強まって、気温が低くなり、大雪になる傾向があります。今年は秋の深まりが遅くなっていますが、冬になったとたん、「寒さ」と「大雪」に見舞われる可能性がありますので、ご注意ください。