福利厚生は学生と企業の「接点」に

 こうした動きについて、働き方評論家で千葉商科大准教授の常見陽平氏もこう語る。

「一連の企業の動きは、働く環境の魅力を見せ、内定した学生を囲い込む、という理由も一つですが、企業側が福利厚生の利用などを通して、『学生(内定者)と会社の接点』を持たせたいのだと思います。昔から、福利厚生は保養所の有無などで、大手と中小で差があるように感じられがちでしたが、今は加入すればアラカルトでメニューを選ぶことができる福利厚生アウトソーシングサービスなどを提供する会社も増え、両者の待遇差は昔に比べて縮まってきました。そのような変化も影響して、学生にアプローチしやすい一つの手段になってきているのだと思います」

 さらに、常見氏は学生たちの企業の選び方にも着目する。

「内定を得た学生たちのいた環境も影響しています。特に今の学生は、コロナ禍で学生生活を過ごしたということもあり、入社する企業を選ぶ際にも、給与や福利厚生などの側面を見ている学生は多いです。そういった面もあり、企業側も福利厚生などのイメージしやすいものを実感してもらって、入社後の将来像などを身近に感じてもらうことも狙いの一つだと思います」

 一方で、「学生側が福利厚生に着目しすぎると、入社後にギャップが生じやすくなるかもしれない」とも指摘する。

「先ほども述べましたが、福利厚生というのは企業の側面にすぎません。将来のビジョンやどんな仕事をしていけるのかとはまた別の話。過去に『ブラック企業』との呼び声が高かった企業が、働き方改革の一環で福利厚生を充実させ、『ホワイト企業』と言われるようになりましたが、実は企業の“ブラック体質”は残ったままで、新卒社員が入社後にギャップを感じてしまったという例もありました。企業選びの一つの要素になっていいとは思いますが、福利厚生の魅力だけにつられて決めてしまうのは良い選択とは言えません。総合的に見ていくことが大切です」

 魅力に感じる福利厚生だが、会社選びは慎重に…。(AERA dot.編集部・小山歩)

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