今回は松本が抜けたのだから、自分がボケとツッコミの両方の役割を担う必要がある。浜田がそう考えたのかどうかはわからないが、明らかに例年よりもふざけっぷりに拍車がかかっていた。
番組後半、コントの準備のために時間をつながなくてはいけない場面では、勝手にスタジオを横切り、本来の立ち位置ではない幕の前に歩み出た。そして、ムーンウォークの真似事をしたりして、好き放題に暴れていた。
浜田が舞台上を自由に動き回り、審査員一同がそこにツッコミをいれる、という構図が何度も見られた。
進行役の浜田はふざける方向に
お笑いコンテストの審査員は、自分からそんなにボケられるものではない。彼らにとって最も重要な任務は、真面目に誠実に審査をすることだ。サービスとして多少ボケることはあっても、それはおまけのようなものだ。
一方、浜田は進行を任されてはいるが、その枠の中で進め方にはある程度の自由がある。そんな中で、今回、彼はふざけまくる方向に舵を切った。そのことで温かい雰囲気を作っていた。
ダウンタウンというのは、良くも悪くも人を緊張させるような存在感がある芸人である。彼らが舞台に上がれば、共演者にもスタッフにも緊張が走り、ピリッとするところがある。
そこがダウンタウンの魅力でもあるのだが、今年の『キングオブコント』での浜田は、自分のせいで空気が重くなり、ピリッとしすぎるのは良くないと考えたのだろう。あえてボケ役を引き受けて、積極的にボケまくっていった。そうやって出場者がコントをやりやすい空気を作っていった。
今年の『キングオブコント』がダウンタウンを欠いたことは残念だが、浜田という太い幹の1つが残ったのは不幸中の幸いだった。この大会が例年通りの盛り上がりを見せた理由の1つは、司会を務めた浜田の見事な立ち回りにあったのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)