占い師、作家 しいたけ.
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 AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占い師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。

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Q:今の職場で20年以上働いています。独身です。以前より残業も減り(したくもないですが)、正社員にもなれず、物価高などでいつも口座はマイナスな生活をしています。ちっとも状況は上向かず、変わらない生活にうんざりしています。昔ほど何をやっても楽しめません。残高がマイナスゆえに仕事も辞められません。つまらんです。本当につまらんです。(女性/パート/41歳/しし座)

A:僕も20代後半にアルバイト生活をしていた時があって、お金もなかったし毎日「つまらん」と言っていました。それで、恥を承知で言うんですが、ある日本気で「お金を拾いに行こう」と作戦を立てたことがあったんです。自動販売機の下を中心に攻めていこうと思って戦略マップも作って。お金が落ちていそうなのは池袋だなと、電車に乗って池袋に向かいました。

 今でも覚えていますが、その電車の中で、もう一人の自分に「バカ野郎、何やってんだ」って怒られたんです。「今まで頑張ってきた部分もあるじゃないか。そこまで落ちちゃいけないよ」と自分に言われて、涙が出てきました。

 それ以来、まず目の前にあることをちゃんとやろう、と心を入れ替えました。当時は中華料理のファミリーレストランでバイトをしていたので、ちゃんとチャーハンに愛される、チャーハンに信用される人間になろう、って。そのきっかけになったのがお金拾いに行こう計画だったんです。

 全然アドバイスになっていなかったらすみません。でも、人って良くも悪くもプライドを持っています。プライドの壁があるから「私にはこんなことできない」と決めつけてしまって、今の自分がいる世界に留まり続けてしまうことも多い気がします。つまらないとか情けないとか自分に対して思っている時に、もう1段階か2段階自分を落としてみることがきっかけになることもあります。どうせつまらないんだったら、一旦恥を脇に置いてやりたかったことをやってみたらどうでしょう、というのが、僕の提案です。

 昔ほど何をやっても楽しめないというのもよくわかります。年齢を重ねていくと何がきついかって、昔の自分と比べてしまうこと。でも比べていいことなんて一つもありません。今年が常にゼロだと思ったほうがよくて、むしろ40代、50代から初心者の気持ちを持てる人は周りから重宝されると思います。プライドを脇に置いて、知りたかったことを相手に聞ける人って、ちゃんと尊敬されます。

 しし座はどこか過去の自分と戦っている面があります。自分の中の最高に楽しかった時、最大に頑張った時がずっと頭にあって、それを乗り越えようとしてしまう。「過去の自分に勝つ」のは素敵な志ですが、過去と同じ環境を作り出そうとしても、しっちゃかめっちゃかになります。戦い方を変えて「今の私はこういう弱さも持っています」と認めてしまうほうが、昔の自分と違う強さも手に入れられると思いますよ。

AERA 2024年11月11日号