ニューロセクシズム
「男女の脳は生まれつき構造が異なるので、行動や思考が異なり、得意・不得意がある」という考え方を「ニューロセクシズム」とよびます。科学的な根拠が乏しいにもかかわらず、いまもなお、この考え方は私たちの社会に根深く定着しているように思います。
ニューロセクシズムの大きな問題点は、その差や違いは生得的なものなので変えることはできない、とステレオタイプ的に思い込ませてしまうことです。これまで脳は教育や環境で変化し得るものだとお話ししてきましたが、ニューロセクシズム的な考えでは、こういった性質を一切無視して、個人の能力を固定観念で判断されてしまいます。
「男性は理系」「女性は文系」にはじまり、本来は平等に与えられるべき教育や就業の機会が、ジェンダーを理由に妨げられている現実があります。
こういったバイナリー的な考え方が無意識のうちに働いて、周囲も本人も気づかない、という現状が多々あるように思います。
例えば、「男性だから」「女性だから」と選択的に与えられた教育や経験により培われた「男性的」「女性的」とされる能力や行動が、あたかも生得的なもののようにすり替えられてしまいます。
さらに、本当は個人の努力や能力によって達成されたことが、「男性だからできた」「女性だからできた」と、個人の努力や能力を過小評価されてしまうこともあります。
つまり、個人としての多様性を軽視し、その可能性を潰してしまいかねないのです。
アンコンシャス・バイアス
そこで、個人がもつ能力や可能性を最大限に引き出せるように、アンコンシャス・バイアスへの気づきが注目されています。
アンコンシャス・バイアスとは、2002年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学の先駆者として知られ、アメリカのプリンストン大学名誉教授であったダニエル・カーネマンによって提唱された概念で、「無意識の思い込み」や「自身で気づいていない偏ったものの見方」のことです。
アンコンシャス・バイアスは誰もがもっていて、私たちの日常に溢れています。アンコンシャス・バイアスそのものが悪いというわけではなく、自身の経験や知識を基に仮説をたてて迅速に行動を起こすことにもつながるので、合理的で良い面もあります。