TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽や映画、演劇とともに社会を語る連載「RADIO PAPA」。今回は映画「Back to Black エイミーのすべて」について。

「Back to Black エイミーのすべて」
11月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイントほか全国公開 配給:パルコ ユニバーサル映画
Ⓒ2024 Focus Features, LLC. All Rights Reserved.
この記事の写真をすべて見る

*  *  *

 そこに行かなければ見えない人生の風景というものがある。だから人は旅をし、本を読み、映画館の暗がりを巡る。ライブや演劇もそう。見たいものは、そこにかつてあった絶対的な「愛」だったりする。

 27歳でこの世を去ったディーバがいた。2011年にアルコール依存症で。イギリス・ミドルセックス州生まれのシンガー・ソングライター、エイミー・ワインハウスのことだ。

 16歳で演劇学校を退学になり、音楽に目覚めた彼女は、このほど公開の伝記映画「Back to Black エイミーのすべて」でこう言っている。

「有名になりたくて音楽を作ったんじゃない。他に何をすればいいか、わからないから」

 そして彼女は恋をする。音楽を作り、歌う意味を見つける。それはパブで出会った「彼=ブレイク・フィールダー・シビルへの愛」だった。

 ワインハウスの楽曲はヒットチャートを上昇、そのハスキーボイスは世界中のラジオ局でオンエアされ、アルバム「Back to Black」はグラミー賞を受賞し、1600万枚以上のセールスを達成する。

次のページ
夫はドラッグ常習者