国内外のツアーを回っていた20代の有村智恵さん(事務所提供)

22年のシーズンでシード権を落とす

 満足のいく準備ができていない状態では、ツアーでいい結果を出すことはできなかった。

「万全の状態で競技に臨めないこともつらかったですし、自分を削りながら妊活と競技を何とか両立させようとしていたのに、それでもうまく妊娠できなかったっていうのがわかったときに、メンタルがすごく沈んでしまって。『競技には1ミリのプラスにもならなかったのに妊娠もできなかった……』って。試合期間中に、今回も妊娠できなかったとわかったときもあって、当時は精神的にひどい状態でした」

 満身創痍(そうい)で臨んだ22年のシーズン、有村さんはシード権(翌年の出場権)を落とす。このことで踏ん切りがついたのだという。

「こうした状況が来年も再来年も続くのは耐えられないなと思いました。これはどっちかに振り切らないと無理だなって。どちらに振るべきかを悩んだときに、シードを落としたことで、『ここで一度妊活に専念しよう』と決断できました」

 23年、有村さんは妊娠を発表したが、「すんなり授かったわけではありませんでした」と明かし、「うれしさよりも不安がまさった」と話す。

「妊娠期もそうですし、出産直後も、心の底から幸せを感じる瞬間が正直なかったんです。妊娠期も健康に育ってくれるかなとか、双子だったので早産も心配で。2人を健康に産んであげられるかなっていう不安が常にありました。生まれた直後もNICU(新生児集中治療室)に入っていたので、出産後も不安は尽きなかったです」

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「この子たちがおなかにいたんだ」