小説もラジオも共通するのは「言葉の世界」であることと、「絵」がないこと。イマジネーションの世界です。言葉で世界を構築するのに小説とはまた違った表現として、春樹さんにとってもラジオは新鮮な気持ちで味わえて原動力になるものでは、という気がします。
昨年3月に放送した特別版「戦争をやめさせるための音楽」では、ダイレクトな反戦歌も選んで流しましたが、印象的だったのは春樹さんが「戦争反対」とは言わなかったこと。そのアーティストが戦争にどう向き合ってきたかを語りかけながら、想像力のところで「人を殺すのはよくない」と思わせる。やはり一流だなと感じました。
春樹さんは読者にとっても、リスナーにとっても「傍らにいる」人。権威主義的なところがなく、上からではなく横から話しかけてきてくれるような、読者やリスナーの人生に伴走してくれるような、そんなイメージがある。ファンにとっては捨てがたい魅力だと思います。
(構成/編集部・小長光哲郎)
※AERA 2023年4月17日号