ベストセラー『死体は語る』の著者が書き下ろした、死体の再鑑定にまつわる九つのエピソード。
警察で一度検死された後、監察医である著者の元に舞い込む再鑑定の依頼。再鑑定が依頼されるのは、その死に漂う違和感があるから。
再鑑定を行い、死体が「語る」検死の矛盾をつく。再鑑定により、自殺とされた検死結果が覆ることもある。〈語弊があるかもしれないが〉と前置きをしながら、再鑑定はドラマチックだと、著者はいう。エピソードで語られる、著者が実際に経験した再鑑定結果は、時に胸をうち、時にホッと安堵する(死そのものは悲しいことだが)。そのカタルシスは、どこか短編探偵小説集を読んでいるようでもある。
サブタイトルの「2度は殺させない」に込められた強い思いが、響く。
※週刊朝日 2016年6月3日号