『ソニー 最高の働き方』(片山修・著/朝日新聞出版)

 桐山は、「社内募集制度」に手を挙げた。募集は、社内のネットワークで検索可能だ。いくつかの候補の中で、最終的に決めたのは、R&D部門だ。事業部から研究開発職への異動である。大学時代に学んだ通信分野に進もうと腹を決めたのである。

 ソニーといえば、家電やエンタメ、半導体といったイメージがある。通信規格といってもピンとこないかもしれないが、じつはソニーの通信の歴史は長い。ソニーの社名はもとは「東京通信工業株式会社」だった。いまも、ソニーの傘下には通信事業のソニーネットワークコミュニケーションズが存在する。多くの通信技術も持っている。

 いざ、自分の進む道を決めれば、一直線に進んでいく。ソニーには、こんなタイプが多い。

「事業部からR&Dへ、まったく異なる職種への異動ですよね。“次のステップへいくぞ”という気持ちを持っていたので、思い切って動きました」

 30歳の決断だった。

社会課題の解決を研究テーマに選ぶ

 R&D部門への異動にあたっては、いくつか候補の研究テーマがあった。

「社会問題、自然災害などに関わるIoTという、新しいテーマに興味を持ちました」

 と、桐山はいう。

 近年の若者は、社会課題の解決や社会に直接影響を与えられる仕事を好む傾向にある。桐山は、通信という自らの専門分野のフィールドのなかで、社会課題の解決に寄与する分野を選んだ。それがIoT(モノのインターネット)向け低消費電力広域規格「ELTRES™(エルトレス)」だ。

 当時のエルトレスは、まだ事業やサービス展開が始まる前の段階で、事業部と一緒になって事業化に向けて動き出そうとしているところだった。

「私が携わったのは、通信の信号処理やアルゴリズムなど、通信規格に関わる部分です」

 エルトレスのチップを搭載するデバイスを開発、生産、販売するのはSSS(ソニーセミコンダクタソリューションズ)だ。厚木テクノロジーセンターのメンバーとともに進めていった。

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