新米が出回り始めたが価格は高騰している=長野県諏訪市、米倉昭仁撮影
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出回り始めた新米は、近年にない高値で販売されている。主食の米の価格高騰は家計の負担だ。米の価格はそろそろ下がるのか。

【写真】農政改革を訴える石破農水相(2009年当時)と「米の価格」を巡る長い闘い

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新米が高すぎて「買い控え」

「新米が入ってきたんですけれど、値段がすごく高くて、お客さんはあまり来ない」

 埼玉県越谷市の浅見米店の3代目店主・浅見正史さんはそう嘆く。

「夏の米騒動のときは、『新米が出るまでは我慢しよう』と、お客さんは高い値段でも買っていた。今は、『新米が出ても高いままか』と、買い控えが続いています」(浅見さん)

 今年の米の価格は平均で昨年の約1.5倍だ。「魚沼十日町 棚田コシヒカリ」は同店で5キロ4240円。浅見さんは今後、「価格は多少落ちついても、高値で推移する」と予測する。

 米業界全体としては依然として品薄だからだ。昨秋は、前年の在庫と新米を同時に販売していた。市中在庫に余裕があった。ところが、今秋は「去年からの繰り越しがゼロ」(同)だ。

「来春から米不足に陥る可能性を見越して、卸売り大手が高い値段で米を買いまくっています。大口の飲食業者に対して在庫を切らすわけにはいきませんよね。もう元の価格に戻ることはないのではないか」(同)

浅見米店は、全国の米どころから厳選した50種類あまりの銘柄米を扱ってきた=埼玉県越谷市、米倉昭仁撮影

不足分を新米で「先食い」

 農林水産省の元官僚でキヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹はこう指摘する。

「今年の不足分を先食いするかたちで新米を消費している。来年7、8月の端境期には再び不足が生じる可能性が高い」

 米不足は国民にとって大きな問題だ。なぜ、主食である米が供給不安に陥るのか。

「需要に対し、米の生産量に余裕がないのが根本原因です。高温障害で米の品質が劣化して商品化率が下がるなどすると、米不足が発生する」(山下さん)

 昨年、収穫された米は記録的な高温の影響で、白く濁った「白未熟粒」や割れた粒など被害粒の割合が増えた。昨年産の、被害粒が少ない「1等米」の比率は全国平均60.9%(2024年3月末時点)で、前年同時期を17.6ポイントも下回った。

 今年産の1等米の比率は63.7%(8月末時点)。猛暑の影響で白未熟粒が多かった。大発生したカメムシの被害も受けた。

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実質的な減反政策は続いている