「異常気象のサバイバル」 “サバイバルの達人”ジオたちを乗せた客船が、超巨大竜巻におそわれる。たどりついたのはなんと! 異常気象がうずまくおかしな世界。ジオたちは、脱出することができるか? (C) Gomdori co., Kim Jeung-Wook, Han Hyun-Dong/Mirae N/Ludens Media/朝日新聞出版/NHK・NEP・東映アニメーション 提供 東映アニメーション

——原作の「科学漫画サバイバル」シリーズやアニメの脚本を、どんなふうに読みましたか?

森崎 子ども向けと思いながらも、大人が読んでもすごくたくさん学べるところがあるな、と。歌詞を書くときにも思ったのですが、一傍観者じゃなくて、その中にサバイブしていく主人公に自分を置き換えやすい作品だと思いました。それも、この漫画で主人公たちがサバイバルするのは、地震とか、気候変動とか、明日起きるかもしれない、現代と背中合わせの危機。その危機自体は天災だとしても、人類が生んだ変化のなかで被害が大きくなっているものがほとんどです。歌詞をつくりながら、僕らが何を必要とし、何を見極めて生きていくべきなのか。そうしたメッセージを少しでも感じてもらえたらいいなという思いはありました。

——オープニングテーマ「ネバネバ」には、ジオやダイヤといった登場人物の名前も歌詞に出てきますね。

森崎 この物語がテレビアニメ化するにあたって、 楽曲とともに、ジオとダイヤは世界に飛び跳ねていくはず。だから、楽曲を聴いただけで、この物語を思い出してもらえるようにという思いを込めて、人物名を入れさせていただきました。ちなみにダイヤのほうは「輝くダイヤ」のようにフレーズになりやすいんですけど、ジオという言葉は単体でイメージが広がりにくくて、けっこう頭を使いましたよね。

 頭を使ったといえば、ラップの部分も。みんながマネしたくなるようなラップにしたいと考えて、担当者の意見を聞きながら、もう何度も書き直しました。ものづくりって、生みの苦しみがあって当然なんですけど、そんな苦しみも今振り返ると、すごく楽しかった。僕も歌詞を作りながら、いわばサバイバーしていたなって(笑)。

「昆虫世界のサバイバル」 “サバイバルの天才”ダイヤたちが昆虫採集をしていたら、ナゾの光につつまれ体が小さくなってしまった! 次々とおそいくる“巨大な”昆虫たち。元に戻ることはできるか? (C) Gomdori co., Kim Jeung-Wook, Han Hyun-Dong/Mirae N/Ludens Media/朝日新聞出版/NHK・NEP・東映アニメーション 提供 東映アニメーション

——小学生のころにご自身で、アニメなどを夢中で見た思い出はありますか?

森崎 僕が日本にきたのは、小学4年生のときです。当時は日本語がまったく話せなかったので、まず日本語を覚えることが先決でした。そのとき僕の日本語の一番いい先生になってくれたのが、教育テレビ(Eテレ)でやっていた子ども番組。「忍たま乱太郎」とか「ざわざわ森のがんこちゃん」などをめちゃめちゃ見てましたね。

 言葉がわからなくてもすごく伝わってくるっていうか、楽しめるっていうのが子ども番組。学校で少しずつ覚えた日本語をおさらいする場でもありました。そうやってだんだん言葉を覚えていくことで友だちが増えていき、世界も変わっていった。

 言葉というのは、その人を表すものじゃないですか。そうやって日本語を身につけると同時に、日本語をしゃべる僕の人格も確立されていったというところです。

——ということは、今回のオープニングの歌を聴いた子どもたちも、新しい言葉を身につけて人生が広がっていく可能性もあるってことですね。

森崎 そう言われると責任重大ですけど(笑)。でも、今回は子どもが聴くからといって、子どもの言葉で歌詞を作るんじゃなくて、例えば、あとに出てくる「リテラシー」とか、少し大人っぽいかっこいい言葉もあえて使うようにしたんです。それに日本人のなかには、英語が苦手と思っている人も多いけど、こういう歌詞に英語を入れて口ずさんでもらえば、耳慣れだってするじゃないですか。英語に対しての拒否反応も薄れるだろうし。それが小学生のときに日本にやってきた自分だからできることじゃないかなと思って。

 そんなことから、今回の歌詞では、日本語と英語っていうのをどうしてもミックスしたいというのはありました。発音もカタカナ英語にしないで、僕が持つ発音能力を最大限に活かしてカッコよく言うようにした。とにかく聴いた人は真似てみて!と思いまして。

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