毎年4月第3土曜日に開催される、個人経営によるレコード屋の祭典"レコード・ストア・デイ"。今年は世界同時に開催され話題となりました。



  アメリカ・メイン州に支店を置くブル・ムースの従業員だったクリス・ブラウンを発起人とし、世界21ヶ国のショップが参加するこのイベント。2013年からは日本でも開催されており、ストアデイ当日には、参加店で限定盤のアナログレコードが販売されたりと盛り上がりをみせています。



 レコード・ストア・デイの基本コンセプトのひとつは、街の小さなレコード屋を支援すること。全盛期に比べその数は減ったものの、現在も日本の街中では、それぞれに特色を持ったレコード屋の数々を目にすることができます。



 こうした街の小さなレコード屋----その歴史は古く明治時代にまで遡ります。



 日本最古の輸入レコード店は、貴金属や時計を販売する商店として創業した、銀座尾張町2丁目の"天皇堂"。1903年10月27日に第1回輸入、翌月8日に発売を開始。そして1907年4月の自社広告にて、当時の米語であるフォノレコードから発案された"レコード"という文字を使ったのだといいます。



 若杉実さんによる本書『東京レコ屋ヒストリー』では、この1903年にはじまり、オンライン事業にも進出した現在にいたるまでの、東京の街におけるレコード屋に注目。数々のレコード屋への取材を中心に、その変遷の歴史を丁寧に辿っていきます。



 取材を進めていくなかで若杉さんは、近年海外からの客人が日本のレコード屋に殺到しているという話を頻繁に耳にしたそう。アジア圏のみならず、アメリカやイギリス、ヨーロッパなどからも訪れる彼らの目当ては日本の音楽。



 たとえば、以前は昭和のアイドルといえば、韓国や中国、香港など、アジア進出が限界でしたが、ユーチューブの存在がその領域を地球全体にまで引き延ばすことに。松田聖子や中森明菜といったアイドルたちの当時のレコードには、第二の春が訪れているのだそうです。



 さらに日本にあるレコードは保存状態も良く、リーズナブルな価格で売られているとあって、日本盤であると知れば喜んで購入していくのだそうです。



 東京中のかつてあったレコード屋、そして現在も存在しているレコード屋の数々を網羅しているといっても過言ではない、本書の圧倒的なデータ量は「レコード屋に行きレコードを買うこと、それはわたしにとって呼吸をすることといっしょ」(本書より)というほど、長年に渡ってレコード屋に通い詰めた若杉さんだからこそ成し得た偉業。

貴重な証言も満載の本書、ときとしてレコードを巡る人びとの生き様をも垣間見ることができます。

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