いつしか、貨幣経済のみを「経済」と呼ぶようになってしまった。

 だが、この「経済」の中で、家事や育児は「労働」として評価されていない。専業主婦(あるいは専業主夫)や育児に専念する女性(あるいは男性)は「働いていない」と見なされ、経済活動に参加していないように思われがちだ。しかし、家庭内での労働、特に育児は、未来の社会を支える「人間」という最も重要な資産を育てる、極めて価値の高い活動である。

 育児や家事は単なる家庭内の作業に留まらず、社会全体の持続可能性に寄与している。にもかかわらず、これらの活動はGDPなど「経済」の指標に反映されない。この現状は、女性が労働市場で活躍することを奨励しつつ、家庭内での育児や家事に対する評価が置き去りにされている矛盾を表している。家庭内の労働を搾取しているともいえる。

 少子化対策を本気で考えるのであれば、育児を単なる「個人の責務」として扱うのではなく、社会全体の重要な経済活動として位置づける必要がある。なぜなら、次世代を育てることは未来の労働力を生み出すことであり、それ自体が経済的価値を持つからだ。育児が社会全体にとって重要な経済活動であると認識され、その価値が評価されなければ、少子化問題の解決は遠のくばかりだ。

AERA 2024年10月7日号

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