山藤:この道一筋にやってきた人をおっかけるドキュメンタリー。僕の所に、あのカメラが来ることはないんだけど(笑)、もし来たとして、プロっていうのは何ですかって聞かれたら、「頂上に行かないことです」って答えます。
伯山:それ、どういうことですか。
山藤:頂上は狭いです、頂上っていうのは。点だから。
伯山:孤独だし。
山藤:だから、本当のプロで、登るのも下山するのも自由で、自分の意思で決めると思ったら、8合目でやめたほうがいいんです。
伯山:なるほど。
山藤:そうすると、まずいカレーでも客は必ず来るわけです。
伯山:そうなんですよ。
山藤:8合目は、商いになる。
伯山:確かにそんなに売れてない落語家のほうが、売れてる落語家より幸せそうなんですよ。
森下:そうですか。
伯山:知名度的に浮気しても、週刊誌には追われない(笑)。こいつは人生楽しそうだなと思って。
山藤:多分、8合目人生なんですよ。
伯山:でも、山藤先生は似顔絵で頂上行っちゃってるから。
山藤:僕はそう思わないですよ。
伯山:8合目だと思ってるんですか。
山藤:ええ。風も当たらないし、雪も降らないし、いいですよ。
森下:頂点に立つと、頂点を維持しようと思って、かなり無理をしないといけませんもんね。
伯山:頂点は危ない。
山藤:転がると死にますから。
伯山:確かにそうだな。
山藤:行く力はあるに越したことはないけど。
伯山:行く力があるやつが8合目にいるのが楽しいんですよね。
山藤:片目でトップグループを見て、片目で大衆を見るのがプロです。
(構成/本誌・工藤早春)
※週刊朝日 2020年12月25日号