イラストレーターで風刺画家の山藤章二さんが9月30日、老衰で亡くなった。87歳だった。週刊朝日で「ブラック・アングル」を45年、「似顔絵塾」を40年にわたって連載した(いずれも2021年終了)山藤さん。似顔絵大賞の選考会にゲスト審査員として参加した講談師・神田伯山さんと語った本音トークの記事を再配信します(AERA dot.で2020年12月22日に配信)。
◇ ◇ ◇
約40年続く名物連載「山藤章二の似顔絵塾」。毎年恒例の似顔絵大賞も、38回目を迎えました。ゲスト審査員には塾長が「前から聞いてみたいことがあった」と手ぐすねを引いていた講談師・神田伯山さん。お互いの本音と本音がぶつかり合う、コロナ禍とは思えぬにぎやかな選考会になりました。(司会/本誌・森下香枝編集長)。
* * *
山藤:芸能人オーラがありますね。テレビにはもったいないけど。
伯山:ありがとうございます。どの絵もよく見えますが、似顔絵のいい悪いを選ぶ基準はなんなんですか?
山藤:作者の、モデルに対する思い込みですね。キレイとか巧いとか、あんまり細かなこと考えず、直感で選んでください。
伯山:直感ですか……どっちのリーチ・マイケルがいいかな。こっちのほうがリーチ・マイケルの良さが出てますけど。悪意がある感じのほうが面白いような……。
山藤:モデルさんが持ってる多面体の一部分から入り込む作風っていうのはありますよね。似顔絵でからかってみようっていう。
伯山:そうですね、この池上彰さん、悪意があっていいですね。
山藤:悪意が生でなければ。それがカリカチュアライズされたほうがいいと思うんですよね。
伯山:僕、この火野正平ですね。自転車もちゃんと描いてあって。敬意とかわいらしさと、顔の色が悪いのもいい。
山藤:あまり、特色のある顔じゃないんですけど。生き方、動作が好きなんでしょうね。作者は。
伯山:そうですね。
森下:私は石破(茂)さん。ご本人に何度かお目にかかったことがありますけど、ほっぺたが、本当にこういうぷっくりした感じなんですよ。それと、総裁選で敗れてしまって。判官贔屓(びいき)で選んでみました。
山藤:私は、水谷(豊)だな。顔がないのがいいね。でも誰だか、「相棒」を知っていればすぐわかる。
森下:そうですね、紅茶を高いところから注ぐ、有名な場面です……大賞はどうしましょうか。
山藤:今年の大賞ですから「流行語大賞」みたいなモノで、流行したからっていいとは限らないけど、広く浅くないと読者には届かない。総合力が問われますね。