米国の大学スポーツのなかでもアメフトは国民的な人気。写真はフロリダ大とシンシナティ大の試合=吉田良治さん提供

野球を続けつつ、勉強を頑張りたい

 アスリート留学生のサポートを手がけてきた株式会社GXAは、今秋30人あまりを米大に送り出した。アスリート留学生は年々増えているという。

 GXAの石井純平さんはこう話す。

「野球の場合、メジャーリーグを目指したいという選手もいますが、野球を続けつつ、アメリカで勉強を頑張りたいという選手のほうが多いと思います」

 先述の佐々木選手や岡田選手のように、スカウトされて奨学金で留学するようなケースはまれだ。石井さんは留学を希望する選手のために、一人ひとりのプロモーションビデオを作成し、全米の大学野球チームのコーチに送付する。

「うちのチームは捕手がほしいとか、来年は外野手がいなくなるので探していますとか、各チームの要望に合わせて、コンタクトをとって入部の交渉もします」(石井さん)

ボーダーラインはTOEFL45点、理想は61点

 入部の許可がおりたら、選手たちに入学条件になっているTOEFLの点数をとってもらう。ボーダーラインは45点。61点あれば、ほぼすべてのコミュニティーカレッジに入学できるという。

「ほとんどのアスリート留学生の最初の留学先はコミュニティーカレッジです。まずはそこで2年間、英語の授業を受けることに慣れてもらう。野球でも実績を残す。その後、4年制の大学に編入する。それが大まかな道筋です」(同)

 コミュニティーカレッジの留学費用は2年間で約5万ドル(約720万円)もかかる。そのため、「費用面が一番のネックになることが多い」(同)。

 ただし、当初は自費留学でも、野球の実績を認められ、他大学に編入する際には約9割の学生が奨学金を支給されるという。

関西学院大学卒業後にカリフォルニア州のコミュニティーカレッジに入学。当初1年間のつもりが、奨学金のオファーを受けてダコタ州立大学(サウスダコタ州)の大学院課程編入した(写真中央)=GXA提供

成績はオールAを目指せ

「単に『アメリカで野球をやりたい』だけでは成り立たないと、学生たちによく話します。成績は最低ラインをクリアするだけではダメで、オールB以上、もしくはオールA、GPAであれば3.5を目指すように伝えています」(同)

 費用面で渡米を断念する学生はいても、学業を理由にアスリート留学をあきらめる学生は少ないという。スポーツ選手として海外で実績を残す、という明確な目的があるだけに、さまざまな「壁」を乗り越えていくガッツを感じる。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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