2009年から6年間上海に住んでいたフリーライターの西谷格氏は、中国で暮らす中で激しい敵意を向けられたり、差別に遭ったりという経験は特段ないというが、「反日感情が中国全体にうっすらと蔓延(まんえん)している感覚はあった」と振り返る。
「中国人と仲良くなると、しばしば『お前は南京大虐殺をどう思っているんだ?』などと聞かれます。相手のトーンは、けんか腰だったり興味津々だったりさまざまですが、議論しても平行線でした。というのも、中国のメディアは南京事件が起きた12月13日や盧溝橋事件が起きた7月7日など日中戦争に関連した日には必ず、『歴史を忘れてはいけない』『日本には警戒しましょう』といったメッセージの報道をするんです。そんなニュースに日常的に触れていれば、大なり小なり日本にネガティブな感情を抱くのは当然でしょう」
日本人学校がスパイ養成所……?
その結果、たびたび不審の眼を向けられていたのが、現地の日本人学校だった。福島第一原発の処理水放出問題で反日ムードが高まった昨年8月には、蘇州や青島など各地の日本人学校に卵や石が投げ込まれた。
西谷氏によると、ネット上には
「日本人学校はスパイを養成している危険な集団」
「いつもカーテンが閉まっていて、何をしているか分からない」
などと不安をあおるような記事や動画があふれているという。反日感情に加え、中国国内に中国人が勝手に入れない空間があることへの違和感が暴走した結果とも捉えられるが、問題はそれらのフェイクニュースが放置されていることだ。西谷氏は言う。