修道女の故渡辺和子さんが著した、約10年前のベストセラー『置かれた場所で咲きなさい』。若い世代は、この言葉をどう捉えているのか。AERA 2024年9月23日号より。
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AERAは8月、「置かれた場所で咲きなさい」をテーマにオンラインアンケートを行った。
静岡県に住む男性会社員(56)は「与えられた場所でじっと耐えた経験」として「新人の時の新規開拓営業」を挙げた。国産車のディーラーで新車販売をしたが売れず、「なんでこんなことをしているんだろう」と悔やむ日々。
でも「やるしかない」と腹を括った。自己啓発本やハウツー本を読み、共感したことを実践するうちにやっと1台売れた。配属されてから約14カ月がたっていた。
「帰り道にお客様の下取り車の中で自然と涙が出てきて、ひとりで大泣きしたことを今でも生々しく覚えています。あの時、適当な理由をつけて会社を辞めなくて本当に良かった」
経験を踏まえ、男性はこう考えているという。「咲ける場所を探す生き方もよいと思うけど、まずはとことんもがいてみてはどうかな、と思います」
環境を変える方が成功
一方、兵庫県に住む男性(50)は「つらい環境にいる人には、棘のように感じる言葉でもあります」と答えた。男性はパワハラ環境に耐えた結果、内臓の持病が悪化。そんな経験を振り返りながら、こう述べる。
「投資で活路を見いだしてFIRE(早期退職)して正解でした。(置かれた場所で咲くのは)平成までの考え方であって、令和の今は環境を変える方が成功する気がします。置かれた場所で咲くことを目指していたら、枯れていたことでしょう」
咲ける場所を求めて動くにはタイミングがある、との声も。
神奈川県に住む女性会社員(56)は「できるなら咲ける場所を探す生き方がいい。自分は我慢し続けた結果、年齢的に次に行くことが難しい」。仕事が向いていないと感じるが、家計のために耐えているという。
座右の銘は「ケ・セラ・セラ(なるようになれ)」。女性の母親がいつも口にしていた言葉で、気持ちが楽になるという。
アンケートに回答を寄せたのは40代後半~70代後半。これより下の世代はこの言葉をどう捉えているのだろう。