小説『傲慢と善良』には強い思い入れがある。「誰に頼まれたわけでもないのに、書店でのランキングをずっとチェックしていました」[撮影:蜷川実花/hair & make up 大島智恵美/styling 横田勝広(YKP)/costume Bottega Veneta]
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 ソロとしての自分と、Kis-My-Ft2のメンバーとしての自分を行き来する藤ヶ谷太輔。仕事観、そして過去に抱えていた葛藤を明かした。AERA 2024年9月23日号より。

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――映画「傲慢と善良」で、主人公の西澤架(かける)を演じた。容姿の整った架には女友達も多く、架が婚活で出会った恋人に対しても「架にはもっと釣り合う人がいるのに」と声を掛ける。相手に悪気はないが、気づけばもてはやされている。それはどこかアイドルや芸能人にも重なるところがあるのではないか。原作となった同名小説を発売時に読みながら、そんなふうにも感じたという。

 24歳でデビューした頃、何も知らない世界で生き残らなければ、と考えた時に「あなたはもっとこうした方がいい」と言われると、「そうか」と鵜呑みにし、気づけば周囲につくられていってしまう感覚というのは、僕自身も経験したことがあり、なんとなくわかるな、と感じました。いまはそんな感覚はないですけれどね。掛けられる言葉が積もり積もって、自分が意識しない方向へ向かってしまうことへの恐れも理解できますし、「意識的に排除していかないと」という想いを抱いた時期もかつてはあった気がします。

「あなたはこうした方がいい」と他人から言われても、プライドもありますし、「自分には合わないかもしれない」という葛藤を抱きながらも、キスマイの藤ヶ谷としては受け入れた方がいいのかな、と思うこともありました。一人の男としての選択と、キスマイの藤ヶ谷としての選択のどちらを優先すべきなのか、わからなくなったこともあったと思います。ただ、最終的には僕という人間の一つの「心」で選択しているわけですから、結局出来あがるものは一つなんですけれどね。

知らない世界への一歩

――キャリアを振り返れば、「やってみたい」と強く願う仕事もあれば、「自分に向いているかわからないけれど、やってみたら面白く、成長した」と感じられる仕事もあるという。どのようにバランスを取りながら、仕事に向き合っているのだろう。

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ゲストとの対話を通して得るものは、とてつもなく大きい