AERA 2024年9月23日号より

 MCを務める「A-Studio+」も、主演したミュージカル「ドン・ジュアン」(2019年)も、それまで自分は強く「やりたい」と思ったことのない分野でのお仕事だったんです。MCをやりたいと積極的に発言したこともなかったですし、ミュージカルに出演することも想像すらしたことがなかったですから。

 自分はエゴサーチをしたことがないので世間の評価はわかりませんが、MCや「ドン・ジュアン」への出演に対する周囲のスタッフさんの評価は意外と高くて。やりたいことが評価されていない、ということではなく、知らない世界から声をかけていただいたときに怖がらずに一歩踏み出したときに広がっている世界の方が大きくて広い、というか。そんなことは漠然と感じました。

コロナ禍が転機に

――なかでも「A-Studio+」への出演は自身の仕事観に大きな影響をもたらした。ゲストとの対話を通して、得るものはとてつもなく大きいという。

 自分自身がゲストとして呼んでいただいた際にすごく嬉しかったという体験が前提にあります。“家族孝行”と“親友孝行”が同時にできた、という思いがあって。面と向かっては聞くことのない父親や親友の気持ちを聞く、という貴重な体験を僕自身ができたわけですから、MCとして「サボることはできないな」と思いますし、「番組に来てよかったな」と思っていただけるようにしたい、という気持ちが大きいんです。

「嫌だったらお答えいただかなくても構いませんが」とお伝えしつつも、その時々に自分が気になっていること、興味があることを尋ねている、という感覚です。その代わり、「藤ヶ谷さんはどうですか?」と同じ質問を投げかけられたとしたら、必ず答えられるよう、自分のなかで答えが準備できているものだけを尋ねるようにしています。そうした姿勢は、ともにMCを務める笑福亭鶴瓶さんから学びました。

 アイドルという仕事柄、なんでもかんでも答えられないな、と思いつつも、たとえば結婚観を聞かれたとしても「アイドルなんでごめんなさい」と逃げたくはないんです。スタジオには、ファンの方もいらしていると思うので、「聞きたくない話もあるだろうな」という葛藤はありますが、それくらいの想いで向き合っているつもりです。

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2024年9月23日号より抜粋

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