――確かに。その視点を踏まえると、地方から都会に出ていく女性たちの気持ちをどのように推し量りますか。
及川:能力や可能性があるのに、そこで生きづらいなら、その地域で自分はがんばれないと思ったら、本当はがんばりたい女性は、その地域の外に行きます。やりやすい仕組みのあるところに行こうと思う。それが東京なのかもしれないし、海外なのかもしれない。
ここじゃ私は輝けない、活躍できないと思ったら黙って出ていきます。地元が「嫌い」なわけではなくて、好きだけどもここにはいられないから出ていくんですよ。それにみんな気づかないといけない。
――及川さん自身はどうでしたか。大学進学を機に上京して、そのまま東京で就職しました。
及川:当時は、はっきりこう思っていました。ここでは稼げない、と。昭和後期の地方です。やっぱり、結婚したら家庭に入るというのが普通の環境でした。結婚した女性が働きに出ると、夫の給料が少ないみたいで格好が悪いとみなされる時代です。
私ね。稼ぎたかったんですよ。家が貧乏だったから。当時の私は、主体的経済力がないと人は社会的に弱者になると思っていた。
学時代もアルバイトしながらなんとか生活して、奨学金の返済、つまり借金を抱えて就職をした。そうなると、結婚したからといって仕事をやめてなんていられない。夫に自分の奨学金を返してくれなんて言ったら、どこに自分が大学を出た意味があるんだろうと。自分でやった事の落とし前は自分でつけないといけないですよね。
何か不測の事態が起きた時に、自分が稼いでいるって一番の安心材料。なによりの保険ですよ。昔の女性たちはその道が絶たれていた。だから稼ぐというのは自立の第一歩なんだと思っています。
――働くことへの意識に、そうした背景があると説得力がありますね。ただ、今の若い世代は、稼ぎたいという切実な動機よりは、自分の人生の幸せのために働きたいというマインドの人が多い気がします。自分が心地いい働き方を求めるというか。正直、それは「ぬるく」感じませんか。
及川:幸せの先に何があると思いますか? 幸せって自己成長しないと持続しないんですよ。自分が成長しない、刹那的な「幸せ」は単なるハッピーとラッキーなんです。