ロシア軍がウクライナ東部に攻勢を仕掛けている。2022年にロシアによるウクライナ侵攻が起きて2年以上が過ぎたが、終わりが見えるような状況ではない。ソ連崩壊後、民主国家として歩み始めた新生ロシアは、なぜ隣国を侵略できるような国になってしまったのか。プーチン大統領やロシアからはいったいどういった世界が見えているのか。朝日新聞論説委員の駒木明義氏がその内情に迫る。(新刊『ロシアから見える世界 なぜプーチンを止められないのか』(朝日新書)から一部抜粋、再編集した記事です)
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ロシアは、国際社会で孤立を深めている。一方で、欧米先進国の二重基準への冷ややかな視線が、グローバルサウスと呼ばれる新興諸国に広がっていることも事実だ。
2023年10月10日、国連総会で興味深い投票が行われた。国連人権理事会の新しい理事国に、ロシアを選ぶかどうかが問われたのだ。
国連人権理事会は、世界の人権状況を監視・調査する役割を担う国際機関だ。06年に発足。個別の人権侵害事案に対して決議を採択したり調査委員会を立ち上げたりするほか、国連の全加盟国について、定期的に人権状況についてのリポートを作成している。
理事国は、立候補した国を対象にした国連総会の投票で選ばれる。任期は3年間。毎年、47カ国の理事国のほぼ3分の1が改選される仕組みだ。地域が偏らないように、世界を5地域にわけて、それぞれに理事国数が割り当てられている。
ロシアはもともと、20年の選挙で当選しており、21〜23年の理事国を務める予定だった。ところが22年に始まったウクライナ全面侵攻、中でも首都キーウ近郊のブチャでの一般住民虐殺が発覚したことをきっかけに、国連総会の決議によって理事国の資格を停止させられたのだ。任期途中の資格停止は、カダフィ政権末期のリビアに対して11年に決議されて以来、2例目のことだった。
それから1年あまり。ロシアが24〜26年の理事国の座を求めて立候補したことは、私にとって耳を疑うできごとだった。
ブチャだけでなく、ロシアはウクライナで数々の非人道的な行為を行っている。一般住民の殺害、捕虜の虐待や拷問、原発への攻撃と占領、民生用の電力インフラの破壊など枚挙にいとまが無い。組織的な子供の連れ去りでは、国際刑事裁判所(ICC)からプーチン大統領に逮捕状が出ている。まるで戦争犯罪のデパートだ。そんな国が、世界の人権状況のお目付け役を担おうとするなんて。
結論から言えば、案の定というべきか、国連総会で行われた投票で、ロシアは落選した。東ヨーロッパに割り当てられた2カ国の枠に当選したのはブルガリアとアルバニアだった。
ロシア外務省は声明を発表。「ワシントン、ロンドン、ブリュッセルとその同盟国が汚い反ロシアキャンペーンを行い、国連加盟国は前例のない圧力をかけられ、しばしば政治・経済的な脅しも受けて、ロシアの理事国復帰が阻止された」と、欧米を非難した。