イラスト:サヲリブラウン
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 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 ビタミン剤の類をひと瓶のみ終わったためしがないまま半世紀生きてまいりました。しかし、そんないい加減な人生とも、この晩夏でオサラバ。ビタミンをグミで摂取するようになったら、一度も忘れないで続けられているから。

 ビタミン剤を錠剤からグミへ。こういうのをライフハックと言うのでしょうか。単に甘いものが好きな卑しい人間だからという気もするけれど、結果オーライ。

 一方で、この夏ライフハックしきれなかったこともあります。顔面に噴き出す汗の止め方です。8月頭の本連載で、洗顔用ティッシュと保冷剤で汗と戦う方法を記したばかりですが、残念ながら完璧とは言えませんでした。どちらも功を奏したものの、問題は家を出てから数時間後だった。

 ある日、外出してしばらく経ってから出先で会う人会う人が、私にティッシュや汗拭きシートを手渡してくることに気づきました。おそらく、ぎょっとするほどの汗なんでしょう。ずーっと拭いたり押さえたりしているのですが、追い付かないのよ。恥ずかしいったらありゃしません。

イラスト:サヲリブラウン

 更年期特有のものかとも思いましたが、私の汗かきは子どもの頃から。20代の頃だって、同じように滝のような汗をかいていたはず。では、なぜここにきて他者は私にティッシュを差し出すのか。

 推測の範囲を出ない話ではありますが、大汗をかいている中年女性は、健康になにか問題を抱えているように見えるからではないでしょうか。「汗凄いね」ではなく「大丈夫ですか?」に見える。書いていて気が滅入ってきました。

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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