なぜなのか。

 連盟では、ルール改訂案を実際に適用した「検証試合」を26チームで行い、導入した場合に対応できるかについて指導者らにアンケートを取った。改訂が実現した2案は、8割以上が「大きな問題はなく対応可能」「小さな問題はあるが対応可能」と肯定的にとらえた一方、「盗塁制限・及び禁止」「ワイルドピッチ及びパスボールによる進塁禁止」は肯定的な回答が3割を切り、消極的な回答がそれを上回った。

 連盟の担当者はこう話す。

「さまざまな意見や議論があり白紙の段階ですが、少なくとも今年12月のルール改訂には反映されないと思います。今後についても、アンケートの結果にも出ていますが、盗塁を一切禁止するという流れにはならないのではないかと感じています。盗塁と進塁の回数に制限を設ける方が現実的かもしれませんが、小学生、特に学年が低い子どもがそのルール改訂を理解して混乱なく対応できるのか、という疑問もあります」

 学童野球の現場からはどんな声が出ているのか。

 埼玉県越谷市を「野球のまち」にしようと活動している「野球の街越谷」実行委員会代表の長瀬翼さん(同市立・大相模中学教諭)が、市内の学童野球の指導者たちに聞いたところ、全員が「盗塁は必要」と回答したという。必要とする理由として挙げられたのは次のようなものだ。

<野球は選手ごとの役割分担がある競技。身体は小さいけど足が速い子どもなどは、盗塁や進塁ができるルールの方が能力を生かせる>
高校野球プロ野球選手を目指す子もいるのだから『走塁』は消さない方がいい>

 一方で、「ルールの工夫はあっていい」との意見が出た。盗塁や暴投・捕逸による進塁そのものが「悪」なのではなく、学童野球の実態に合わせて運用の仕方を変えていけばいいという考え方だ。市内のチーム同士の試合でも、特に低学年では「無限ループ」が散見されるという。そのため、例えば練習試合であれば「打者一巡したらその回の攻撃は終了」など、チームの実情に合わせたルールを指導者同士で話し合って決めるケースがあるそうだ。

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子どもの野球人口が少なくなったことも影響か