名言はスポーツのジャンルも問わない。「リスクの中で 何かをしねェ奴には 絶対に“勝ち”はない!!」は、自転車漫画「弱虫ペダル」(渡辺航/秋田書店)の知られたセリフ。
お互いに高め合って
マンガ図書館のストークス・セリーナさんが「様々な場面で勇気をくれる言葉」と紹介してくれたのは高校アイスホッケー部を舞台にした「ドッグスレッド」(野田サトル/集英社)の「今日は特別な日ではない みんなで犬のように夜まで走り 校歌を歌ったいつもの今日である」というセリフだ。
また、吃音(きつおん)症の高校生カボがダンス部で成長していく「ワンダンス」(珈琲/講談社)では、「でも 違うんだよな 結局カボ君って才能とかじゃなくて『練習してる』んだよ 練習量が違う 俺もっと練習しないと…」というライバルの言葉に、「お互いに高め合っていこうとする熱さを感じた」という。
一方、マンガ図書館の信濃潔さんは闘牛漫画「ゴロンドリーナ」(えすとえむ/小学館)を取り上げた。
「スポーツと正反対のところにある死を見つめる物語。スポーツ漫画の言葉としてはふさわしくないかもしれませんが……」と前置きしつつ紹介してくれたセリフは、事故で半身不随となった闘牛士が号泣する姿を見た主人公の、こんな心の声だった。
「人が、あんな風に泣くのを、初めて見た。体全部を震わせて、言葉なんて忘れたみたいに。でも、なんでだろう。どこか産声みたいだった」
ほかに剣道漫画の「六三四の剣」(村上もとか/小学館)からは主人公・夏木六三四の「負けるつもりで前にでることこそ、強い心がなければできねえ!」という言葉や、ラグビー漫画の「マドンナ」(くじらいいく子/小学館)の「ねえ、先生、人生だってそうでしょ。どんな奴だって自分のポジションが見つかればやる気出すもんでしょ」という桑形の言葉、バスケ漫画の「黒子のバスケ」(藤巻忠俊/集英社)からは、火神大我の「やっぱ人生挑戦(チャレンジ)してナンボじゃん 強ぇ奴がいねーと生きがいになんねーだろが 勝てねぇぐらいがちょうどいい」、青峰大輝の「あきらめなければ必ずできるとは言わねぇ けど諦めたら何も残んねぇ」など、さまざまなジャンルの漫画が心を動かすセリフを残している。(ライター・福光恵/企画協力・門脇正法)
※AERA 2024年9月2日号より抜粋し一部加筆