エレベーターの「片側空け」はその是非が議論の的になっている。写真はイメージ(GettyImages)
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 議論の的になる「片側空け」の抑止を掲げた新型エスカレーターを、日立製作所と日立ビルシステムが開発した。片側空けの慣習は日本に強く根付いているが、身体に障害があるなどして一方にしか立って乗ることができない利用者は、時に「どけ!」と怒鳴られてしまう現実に苦しむ。当事者たちは「社会が変わるきっかけになってほしい」と新たなエスカレーターに期待を寄せる。

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 日立製作所と日立ビルシステムの2社が開発した新たなエスカレーターは、2025年の大阪万博に合わせて開業する、北港テクノポート線の夢洲(ゆめしま)駅に納入される予定だ。万博開催中の夢洲駅は1日に12.6万人の利用者が見込まれており、しかも世界中から外国人がやってくる。開発側は、利用者の視覚に訴えるのが最も効果的と考え、LEDを活用した新たな機能を搭載した。

 その新機能は、以下のような仕組みだ。

  1. まずはエスカレーター乗り込み口となるステップの2カ所にLEDを照射し、立ち位置を明示することで2列で利用するように誘導を図る。利用者の目線では、乗ろうとする際、ステップ上の左と右に丸い明かりが見える形となる。
  2. 次は、ステップが階段状にせり上がっていく箇所で、ステップの蹴上げ(垂直面)にLEDを照射する。光によって段差を目立たせることで、立ち止まって利用するように促す。
  3. さらに「スカートガード」と呼ばれるエスカレーターの左右の側面にLEDを設置。ステップのスピードに合わせて点滅させることで、歩かないように促す。
日立製作所と日立ビルシステムが開発した「新型エスカレーター」(画像=日立ビルシステム提供)

 開発段階では、モニター調査を行なって参加者に実際にエスカレーターに乗ってもらい、「ステップ上のLEDが点灯していた方が歩こうとしなくなる」などの声を集め、改良を重ねたという。

 担当した日立製作所の三浦壮太技師は、「モニター調査の結果による『感覚的な評価』が基になっていますので、この新機能だけで片側空けを一気に解消できるといった完璧な製品ではありません」と率直に話しつつ、その効果に期待を寄せる。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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