AERA 2024年9月2日号より

 つまり、個人はモノを最大化することを考え、企業はカネを最大化しようとする。企業連合がつくる経済団体などは、政権に対して円安にしてほしいというお願いをする。その結果、政府は量的緩和政策など、自然と円安の味方になる政策をとってきた。

 今年に入ってから為替相場は1ドル=140〜160円台の円安水準で推移している。だが、日本の製品が売れているかというとそうではない。7月30日に今年の上半期(1〜6月)の貿易統計が発表されたが、なんと3兆2千億円の大赤字。日本製品に昔ほどの輝きはないのだ。

 1980年代は自動車や家電が日本の膨大な貿易黒字を牽引していたが、家電については輸入に頼るまでになってしまった。

 モノを最大化したい個人にとっては円高が良くて、カネを最大化したい企業にとっては円安が良い。どっちがいいのかというと、円高であることは言うまでもない。国は企業のために存在しているのではなく、個人のために存在しているからだ。

 この円安で外国人観光客が押し寄せ日本の観光産業はお金を儲けているが、僕ら個人は海外旅行へのハードルが高くなってしまった。

 円高だったあの時代に戻ってほしい。僕は円高の味方であり続けたい。

田内学(たうち・まなぶ)/1978年生まれ。ゴールドマン・サックス証券を経て社会的金融教育家として講演や執筆活動を行う。著書に『きみのお金は誰のため』、高校の社会科教科書『公共』(共著)など

AERA 2024年9月2日号

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