注目される「戦後80年」の天皇の言葉
全国戦没者追悼式では、18歳未満の若い世代も壇上で献花をする。厚生労働省によると、今回の式典に参加した最年少は、戦没者の玄孫で3歳の酒井清凪(せな) ちゃん。18歳未満の出席者は全体の2%程度だが、60人が参列した。
令和の天皇の「おことば」にも、若い世代が参列する状況と軌を一にするような変化がみられる。
2020年からあったコロナ禍に触れた表現がなくなり、23年からは、
「これからも、私たち皆で心を合わせ、将来にわたって平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願います」
という表現が入るようになった。
この「未来志向」の表現は、6月の英国訪問の際にも見ることができた。陛下は晩餐会で、
「日英両国には、友好関係が損なわれた悲しむべき時期があったが、苦難を経た後に長い年月をかけてはぐくまれた交流は、次世代を担う若者や子供たちに着実に引き継がれ、進化していく」
と、次世代への希望について述べている。河西さんは、
「令和の天皇は、戦争は体験していないが歴史家でもある。日本の凄惨な歴史とどう向き合い、次世代への継承を促していくのか。それを令和の天皇は模索し続けているのでしょう」
と指摘する。
これからの全国戦没者追悼式のあり方について、模索が必要ではないかと感じているのは遺族も同じだ。
父親が中国・天津で病没死したという東京・多摩市の遺族会の上田次兵衛さん(84)は、追悼式について、こう話す。
「戦争を経験した人たちは、聞く人の魂を揺さぶるような追悼の辞を述べ、我々遺族に共感してくれる。しかし、戦争を知らない世代の多くは傍観者でしかなく、追悼式はどんどん中身のないセレモニーとなっているように感じます」。
上田さんは、全国から遺族を招いて手順の決まった「儀式」をただ続けるのではなく、戦争の記憶を次世代に継承していくことが必要ではないか、と感じている。
来年の2025年は、戦後80年の節目となる。その追悼式で、天皇陛下はどのような「おことば」を述べるのだろうか。
(AERA dot.編集部・永井貴子)