古賀茂明氏
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 8月6日広島・9日長崎の原爆の日、そして15日の終戦記念日。8月は、戦争と平和について考えさせられる日が続く。

【写真】「歩く昭和」と指摘された政治家はこちらの二人

 6日の広島の原爆の日の岸田文雄首相の演説を聞いたが、「非核三原則の堅持」「『核兵器のない世界』の実現に向けた努力」を掲げ、「核兵器不拡散条約(NPT)の維持・強化のため、現実的かつ実践的な取り組みを進め、核軍縮に向けた国際社会の機運を高める」と述べただけで、全く心のこもっていない、型通りのスピーチだった。もちろん、聞いている人には何のインパクトもない。

 今夏は、ウクライナ戦争に加え、ガザでのイスラエルの関与が指摘され大量虐殺という悲惨な事態が加わり、さらに、最近では、イスラエルによるイラン国内でのハマス最高指導者の殺害を機に、イランやその支持勢力によるイスラエルへの本格攻撃の危機が迫っている。

 ロシアや北朝鮮による核兵器使用の「脅し」もあり、例年以上に被爆国日本としては、なんとかしなければ、となるはずの年である。

 それにもかかわらず、岸田首相が「例年通りの」スピーチを行ったことは、日本政府が「戦争にも平和にも取り立てて関心を持っていない」ことを発信したのと同じだ。

 岸田氏の能天気なスピーチを聞いて、今回は、現在、キューバ危機に匹敵するくらいの核戦争の危機が迫っているという話を書くことに決めた。

 一昔前なら、「核を使う」ということを世界の指導者があからさまに口にすることはなかった。しかし、北朝鮮の金正恩総書記はともかく、ロシアのプーチン大統領は最近はっきりと核の使用に言及している。

 さらに驚いたことには、英国のスターマー新首相は、先の総選挙の期間中に「核抑止力は英国の防衛に不可欠」「それを使う用意がなければならない」と述べて世界を驚かせた。

 ここで注目すべきは、米国を中心とするNATOとこれに擦り寄る日韓などの勢力と、ロシア、中国、イランなどの勢力が完全に分断されているということだ。

 筆者は、8月1日に米国から帰国したが、その直前、米国の反核・平和活動をしているあるNPO(米国などの軍隊の情報部門OBなどが加わっていて単なる平和活動というより情報分析能力に特徴がある)の幹部から連絡があった。私の本コラムの記事を見てどうしても会いたいと考えたためだという。

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核軍縮はできるのか