今回、発表された「VAIO Phone Biz」はWindows 10ベースのスマートフォンで、主にビジネス用途を想定しているとのことだ。同社のハイエンドPCの「VAIO Z Canvas」と共通する、アルミ合金という素材と造形を採用したデザインなど、今回の端末にかけるVAIOの意気込みが感じられる。

 VAIOはソニー時代からマイクロソフトWindowsアーキテクチャを採用した製品をつくってきた会社であるから、前作のAndroidベースの「VAIO Phone」の方が、流れ的には異端とも言え、今回の製品がVAIOの技術を動員した初のスマートフォン参入と言ってもいいだろう。「VAIO Phone Biz」の製品についての評価はすでにIT系メディアが多く報じているのでこのあたりで割愛して、この商品の発表会で感じた携帯電話ビジネスの地殻変動を論じたいと思う。

●SIMフリー、他社電波帯域対応、そしてメイン販路のドコモのロゴはなし

 今回の「VAIO Phone Biz」も、メインの販路はドコモの法人向けということで、発表会にはドコモの常務で法人ビジネス本部長の高木一裕氏も出席し、「VAIO Phone Biz」への期待を語り、発表会後の質疑応答にも応えた。質疑応答では、ある記者が面白い質問をした。「VAIO Phone Bizにはドコモロゴは入らないのですか?」というものだ。

 ドコモの携帯電話には必ずと言って良いほど、ドコモのロゴマークが印刷されてきた。例えば、ソニーのXperiaは、一昨年のモデルまでは正面上部、グローバルモデルだとソニーロゴが入る位置にドコモロゴがついていた(昨年のモデルからは背面中央)。

 例外がiPhoneであり、ドコモのiPhoneにもドコモロゴがついていないが、ドコモのiPhone発売にあたってドコモとアップルの間で「ドコモロゴを入れる、入れない」は相当揉めたという。iPhoneという例外もある上、「法人ビジネスではこれまでも例外はある」と高木本部長は応えていたが、ドコモがメインの販路でありながらドコモロゴが入らないというのは珍しい。

 それだけではない。通常、国内で発売されるキャリア向け端末は全数キャリア買い上げが常識だが、この「VAIO Phone Biz」はSIMフリー端末として、VAIOの通販サイトでも個人向けに販売されるという。端末メーカーが自身で端末を販売するのは、ソニーやシャープなど他のメーカーでも行われているが、キャリア向け端末と全く同一の機種をメーカー自身が個別に販売した例は恐らくない。

 しかも、「VAIO Phone Biz」はドコモ販路の商品も含めて全てが最初からSIMフリー端末であり、ドコモ以外でもどこのキャリアでも使用することができる。また、この端末の通信には他のスマートフォン同様にLTEが用いられているが、LTEのバンド(周波数帯域)はキャリアごとに割り当てが決まっていて、キャリア端末のSIMロックを解除しても、共通バンド以外のLTE通信ができないのが一般的である。ただ、auやソフトバンクに割り当てられたバンドで言えば、従来の2GHz帯を中心としたバンドだけでなく、800MHz帯を中心としたプラチナバンドも含めた各LTEバンドに対応している(周波数が高くなると電波の直進性が強くなり、低い帯域の方がつながりやすくなるので、800MHz前後の帯域をプラチナバンドと呼んでいる)。

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