渡辺さんは2017年12月、一般事務として16年間働いてきた派遣先を「雇い止め」になった。最後の出勤日には悔しさから涙があふれた(写真:レイバーネット日本提供)
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 2022年から東京都練馬区区議を務める渡辺照子さん(65)。30年以上、非正規で働き続け、派遣社員として雇い止めされた経験もある。そんな渡辺さんが、女性たちを取り巻く現状と課題を語った。AERA 2024年8月12日-19日合併号より。

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──女性の非正規労働者が多いです。令和4年版「男女共同参画白書」によると、労働者全体における非正規雇用労働者の割合は36.7%。うち、男性は21.8%に対し、女性は53.6%にも上ります。

 女性に対して性別役割分業がより重く課せられていると感じます。女性は家庭の外での有償労働に加え、家に帰れば家事、育児、介護といった無償労働のケアワークをせざるを得ません。二重労働です。その証拠に、日本の女性は睡眠時間がとても短いのです。

 それにひきかえ、男性は、終業時間の間際になって「今日のご飯はどうしよう」と思わなくてもいい。「保育園にお迎えに行って、子どもがぐずったら、子どもを引きずってスーパーに買い物に行かなきゃ」なんて思わないですよ。だから男性は、仕事に専念して、残業も出張も転勤もできますよね。

 ケアをしない男性の働き方、つまり「ケアレス・マン」モデルが、正社員の働き方となっています。家事・育児をしなければならず、この働き方ができないために、非正規労働を選ばなければならない女性は多くいます。今はシングルの女性が多いですし、結婚して共稼ぎをしないと一家の家計をまかなえない人もいます。女性がいっぱしの賃金を稼げないとだめなんですよ。

「3年ルール」に絶望

──どのような法整備が必要ですか。

 まず現行法を順守し、労働者の保護を強化すべきです。企業は正社員に対してコンプライアンスを守っていますが、派遣を含む非正規労働者に対してはコンプライアンス意識がないように思えて仕方ありません。

 派遣には「登録型」と「常用型」があります。企業が雇用責任を負わない「登録型派遣」は、派遣期間が終わると、派遣先とも派遣元とも契約が終わり、職がなくなります。

 女性の多くは、登録型の事務職です。事務職は、同じ仕事をするなら若い方がいい。そういう隠れたルールが、企業にあるのかもしれません。

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男性もケアワークを