前日から大幅に上昇した日経平均株価=2024年8月6日午前9時54分、東京都港区、

 7月初めに1ドル=161円台の水準だったドル・円相場は、米国の景気悪化を示す経済指標が相次いだことから、ドル安・円高が進んでいた。そうしたなか、日銀の決定会合で追加利上げが決まると、円高の動きはさらに加速。8月5日には一時同141円台に達した。

 株式市場でも、日経平均株価は同日に終値が前週末比4451円28銭安の3万1458円42銭と過去最大の下落幅を記録した。下落幅は37年前の1987年に起きた世界株の大暴落「ブラックマンデー」時を上回る。

 市岡さんは、相場の値動きがこのように「想定外」の大きさになったことで、さらに傷口は広がったと指摘する。

「一般的に、投資ファンドは相場が一定以上の値動きを超えたらポジションを手じまいする社内ルールを定めているものです。リスク管理として、損失が大きく膨らむのに歯止めをかける狙いです。しかし、こうしたルールによって、自身の損切りラインに抵触するファンドが相次ぎ、円高と株安の進行を助長することになったとみています」

「売り」が「売り」を呼び、値下がり幅が増幅される構図だ。ただ市岡さんは、相場の変動はこれだけでは済まないと心配する。

 このうち、気がかりなのは「追い証」と「仕組み債」の存在だ。

 借り入れでレバレッジを利かせて投資していた投資家は、投資する資産が大幅に値下がりした場合、担保として差し出している証拠金を追加で差し出すよう求められる。これが「追い証」だ。証拠金を払うには、保有する別の資産を売ったり、借り入れたりしてお金を用立てる必要がある。

 つまり、別の資産の売却や値下がりを招くきっかけになる。

 また、「仕組み債」は、デリバティブ(金融派生商品)を使って比較的高いリターンが期待できる一方で、為替や株価の値動きの影響を受ける商品だ。あらかじめ定めていた一定の価格(トリガー価格)を割り込んだら、元本の大部分が毀損する契約のものもある。

次のページ
大きな損失を被った投資家は少なくない