過去最大の下落幅で取引を終えた日経平均株価=2024年8月5日午後4時43分、東京都中央区
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 7月に日本銀行が追加利上げを決めると金融市場では円高や株安が急速に進み、乱高下を繰り返す不安定な値動きが続いている。今回の株価急落で傷を負った投資家は多いはずだ。相場研究家の市岡繁男さんは、金融市場が落ち着きを取り戻すまでには時間がかかりそうだとみている。

【写真】翌日には大幅上昇…株価が乱高下

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 日銀は7月30、31日の金融政策決定会合で、国債買い入れの減額計画と追加利上げを決めた。政策金利である短期金利(無担保コール翌日物レート)の誘導目標は、それまでの0~0.1%程度から0.25%程度に引き上げた。

 市岡さんは、この日銀の追加利上げが今回の相場変動を誘発したとみている。

「追加利上げに関しては、実際にやるかどうか見方は分かれていたこともあり、意表を突かれた投資家は少なくなかったようです」

 市場では円安・ドル高を背景に、金利の低い日本円を借りて、それを元手により高いリターンが期待できる通貨や資産に投資する「円キャリー取引」が広がっていた。取引では日本円よりも高金利のドルや、ほかの通貨、日経平均株価や米ナスダック総合指数の先物取引といった、いろいろな金融商品に投資する動きもある。

 しかし、今回の追加利上げで、円の調達コストは値上がりした。ヘッジファンドなど、こうした取引を手がける投資家は、借り入れで元手を膨らませてレバレッジを利かせてより多くの資金を投じているケースが多い。円の調達コストが上昇したことで、こうした取引の「巻き戻し」が起きた。

 市岡さんは続ける。

「レバレッジを利かせて投資しているため、わずかな金利の上昇でも影響は大きい。そこで慌てて、自分のポジション(持ち高)を手じまいしたことから、外国為替相場はそれまでの円安から円高へ、日経平均やナスダック指数は下落へと急速に転じました。それが今回、下げ幅を拡大した理由だと考えています」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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