今さらながら、インターネット上には実に様々なポータルサイトがある。どうしてこんなにマニアックな分野を扱うのかと疑問を抱くものも少なくないが、山田コンペーが運営するサイト「給料BANK」は多くの職業の給与水準がわかると話題になり、先月、『日本の給料&職業図鑑』として書籍になった。
 取りあげられた職業は271種。それぞれにゲームの登場人物よろしく派手なイラストが添えられ、仕事内容の解説とともに平均給料・給与、20代・30代・40代の給料が紹介されている。〈その他〉まで含めて全8章で構成されているのだが、最初に〈IT系職業〉がくるあたりはネットから誕生した図鑑らしい。
 個々に見ていくと、弁護士や税理士や医者等よく知られた職種の一方で、高速道路料金所スタッフ、乳酸菌飲料配達員、クリーニング師、カニ漁船漁師、たばこ屋、劇団四季団員、ひよこ鑑定士等も登場して、その幅の広さについ苦笑する。最近の人気に反応したのだろう、ラグビー選手にもページが割かれていると知ったときには、さらに笑ってしまった。ちなみに、カニ漁船漁師の平均は100万円、ひよこ鑑定士は35万円、ラグビー選手は36万円らしい。
 ところで、かつてリクルートで就職情報誌の編集長をしていた者としては、中高生がこの本を読み、ぼんやりとでもいいから進路選択の参考にすればと思う。たとえ仕事内容や給料に惹かれても、資格が不可欠の職種も多々あるから、それを知っているだけでも進学先を決める際に役立つだろう。
 大学生になって初めて多くの職種を知っても、就職ではなく、どうしても企業への就社活動を優先しがちになる。だから、将来について不安を覚えはじめる中学時代に、村上龍の『13歳のハローワーク』を読んで自身の興味と仕事の関係性について考え、この本で収入面について学べば、まだ遠い自身の未来が、少しはクリアになるかもしれない。

週刊朝日 2016年3月4日号