松本明子(まつもと・あきこ)/1966年生まれ、香川県出身。アイドル歌手としてデビュー後、バラエティー番組などで活躍。著書に『実家じまい終わらせました!』(写真:ワタナベエンターテインメント提供)
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 空き家になった実家を相続した松本明子さん。「実家じまい」を考えたものの、なかなか手がつけられず、多額の費用を投じることになったという。その額、なんと1800万円。松本さんが失敗談と、そこから得た教訓を語ってくれた。AERA 2024年8月5日号より。

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 25年間、維持・管理をし続けてきた香川県高松市郊外の実家を2018年に売却しました。この間、かかった費用は1800万円を超えています。空き家になった実家の処分を後回しにした結果、とんでもない大赤字になってしまいました。これは私の「しくじりの歴史」です。

 実家は、山の中腹の新興住宅地に父が建てた念願のマイホームでした。純和風の平屋建て。宮大工に頼んだ、釘を一本も使わない木組みの家で、私も10年住んだので愛着があります。

 デビューして10年は鳴かず飛ばずでしたが、ようやくレギュラー番組が決まるようになり、27歳の時、親孝行をしようと定年退職していた父母を東京へ呼び寄せました。最初の頃は両親が家の管理のために年数回、高松へ帰っていましたが、父は私が37歳の時に病気で亡くなりました。病床で父から言われたのが、「明子、実家を頼む」の一言。実家は本格的な空き家になっていましたが、その言葉はとても重く響きました。

 父の死から4年後、母も他界し、母の遺言で私は実家を相続しました。この頃には実家があまりに遠いので、心中では「実家じまい」も考え始めていました。本来ならこの時、片付けに行くなりしておけばよかったのですが、目の前の生活で手一杯で腰があがりませんでした。

 固定資産税や光熱費、火災保険料は払いっ放し。「雑草が管理されていない」との近所の苦情で市役所から電話がかかってきたこともあります。その時のアドバイスで、雑草駆除や庭木の手入れはシルバー人材センターに年2回約10万円で頼んでいました。

 実家をどうするのか。なかなか決断できず、別荘代わりに使えるかもしれないと、リフォームしたこともありました。親戚や近所中に声をかけ、借りてくれる人や寄り合いに使ってくれる人がいないかを探したこともありました。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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