資金引き出しの不自由さ、高い手数料、凍結中の特別法人税、出口の課税。個人型確定拠出年金で、変わってほしい点を列挙する。厚生労働省に届きますように。AERA2024年7月29日号より。
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iDeCo(個人型確定拠出年金)の改正に向けた検討がなされている。6月、岸田文雄首相は企業年金やiDeCoに対し「加入者の利益最大化へ改革の検討を進め、年末までに結論を得る」と発言した。12月の税制大綱で発表されるか。
iDeCoはNISAより不人気だ。2024年3月末現在、NISAは2322万口座(休眠口座も含む)。iDeCo加入者は328万人。数字だけ見れば7倍の差だ。iDeCo改正の議論中なら、よりよい制度になってほしい。そこで改善希望点を列挙すべく取材した。
所得控除は魅力
まずは一般の声を聞こう。教育職(専門は英語)の40代独身男性、ユキトさんはiDeCoに月1万2千円を拠出(積み立て)している。買っているのは「楽天・全米株式インデックス・ファンド」。iDeCoを始めたのは22年8月だ。24年6月時点でiDeCoに投じたお金は26万9370円、評価額は37万8093円。差し引き10万8723円(約40%)の利益だ。
ユキトさんは08年にリーマン・ショックが起きた頃、大学院生時代に投資を始めた。なぜiDeCoは約2年前なのか。
「30代後半になり、金銭的な余裕が少しでてきた点が大きいです。『老後まで資金を拘束されても困らない』と思いました。勉強のためにやってみよう、というのが一番の動機です。SNSで投資に関する発信を始めたので、iDeCoの情報も書きたいと。掛け金が全額所得控除になる点は魅力でしたし」
かつては途中で引き出せないことをネックに思っていたが、今は考えが変わった。
「私は投資で高めのリスクを取るタイプです。資産の95%がリスク資産。全体の7割が個別株で、FXなどでレバレッジをかけた取引もします。本業が安定しているので、これらのリスク資産が仮に全損しても老後はなんとかなりますが、相場は何が起こるかわかりません。現役時代に手が出せない『保険』としてiDeCoを活用します」