昭和天皇が「愛用」したミッキー時計
ロスのディズニーランドには、昭和天皇も訪れている。
終戦から30年の節目の1975年、昭和天皇の初めての訪米が実現した。ニクソン・ショックで日米関係が冷え込むなか、そして第2次世界大戦の傷跡と向き合う旅でもあった。
訪米を記念した写真集『天皇のアメリカ』に収められた朝日新聞記者の随行記には、
「日本赤軍などの過激派による襲撃が心配される中でのご訪米は、(略)シークレット・サービスを中心とする米警備当局の‟過剰”とすら見える厳重な警備に守られて進められた」
とある。
ホワイトハウスで開かれた晩さん会で、昭和天皇は「私が深く悲しみとする、あの不幸な戦争」と言及。翌朝、アーリントン国立墓地で供花した。随行記には、供花と追悼への祈りについて「訪米の最大の主題が完結した」と記されている。
昭和天皇は、日系人と交流した後、ロスのディズニーランドを訪れた。鮮やかな赤いネクタイを締めた昭和天皇と香淳皇后はミッキーと握手をし、乗り物に乗ったりパレードを見たりして、1時間ほどの滞在を楽しんだ。香淳皇后が観覧席で5歳の男の子を膝に寄りかからせながら見物する一幕もあった。
一見のどかなディズニーランド見物だったが、当時の朝日新聞によると、60人を超えるシークレット・サービスが警備を固め、ライフル銃を構えた警官が施設の屋根の上にも目を光らせるという「異様なふん囲気」だったとある。