上海株の大暴落をはじめ、人民元の対ドル為替相場の切り下げ、全国各地で廃墟と化している工業団地や商業施設、主要業種に広がる深刻な過剰設備、さらにはおよそ2億人分に及ぶとされる不動産の余剰在庫など、中国経済の憂々しき実態が次々と顕在化している。中国経済は今、どこまで失速しているのか。全世界が注目する中で、2015年の実質GDP(国内総生産)の成長率が発表されたが、データの信憑性が怪しいことを知る者の中には、公表された数値を信じない人もいたのではないか。

 公表されたGDPの数値は、想定内の前年同期比6.9%増であった。ちなみに、中国政府の目標値は7%である。これに対し、国内外の消息筋の事前予測では、おおむね数字の操作を織り込んで6.8%前後と見られていたが、案の定、その中間に落とし込んできたと思える苦肉の策であった印象は拭えない。

 発表した時点も、昨年末からわずか3週間以内の1月19日である。これ自体が信じ難い早さで、不自然ではある。自由経済圏の場合、最も早い米国でも締め切り1ヵ月後であり、EUや日本では大体、同50日後である。

 GDP統計は、一般に各種統計を加工した、いわば二次統計なので、その算出には一定の手間暇がかかる。先進国の場合は、関係各省庁が英知の粋を集めた複雑な計算式の下で算出し、産業連関表などを駆使して、算入が重複しないよう、縦横斜めの試算を繰り返してから公表するため、これ以上は短縮できないという日時を要してから公表する。中国の場合はこの精査工程を省略して、「算入の重複を削除しないまま公表しているのではないか」と疑われてもやむを得まい。仮にそうだとすれば、GDPは水増しされ、成長率は上振れすることになる。

●信じられないGDP統計発表の早さ 「李克強指数」が信頼される理由

 中国の経済政策の司令塔である李克強首相は、前職の遼寧省共産党委員会書記であった2007年当時、すでに「中国のGDP統計は人為的であるため、信頼できない」と喝破して憚らず、「経済指標として信頼できるのは貨物輸送量、電力消費量、銀行融資残高の3指標だけである」と公言した。それ以来、中国ではGDP統計よりもこれら3指標による「李克強指数」の方が信頼され、跋扈しているのが実態である。こうした状況に鑑み、統計作業を透明化、改善しようという声も聞こえてこない。GDP統計による公表データの同6.9%増を、この李克強指数で試算し直した修正値もある。それによると、実際は半分以下の同2.8%増だという。

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