しかし、この後「無限城の戦い」で、珠世は「誰かを治すために作り出した薬」を、「敵を倒すための毒」として使う。もうひとつの動機、憎しみと懲罰である。鬼として生き、罪を重ねた自分を罰するように、“無惨とともに”消滅することを願う。彼女は無惨に向かって、悲痛な声で叫んだ。
「私はお前とここで死ぬ!!」(珠世/16巻・第138話)
珠世は「人間化の薬」によって、無惨が恐れていた「人としての死」を彼に突きつける。鬼としての珠世の償いは、ここで果たすことができるのか。長い辛苦に耐え、自分の心を吐露しないままに無惨滅殺にすべてを賭けた、優しく美しい鬼・珠世。彼女の覚悟の深さが、この後に続く「無限城の戦い」で、丹念に描かれることだろう。