必要なときにタクシーを使えない

 たとえば地方に行ったとき、比較的大きな駅の周辺でも、タクシーをつかまえるのに苦労した経験はないだろうか。街中を空車で走る「流し」のタクシーも、一時期に比べて少なくなった。

こうしたなかで、必要なときにタクシーを使えない人がいるとすれば、問題だろう。交通手段が見つからず、通院や買い物が困難になる事態も想像できる。

 アプリから弾かれてしまうがゆえに、切実なニーズを抱える人がいることと、タクシー事業の行方に岡崎さんは危機感を抱いている。

地域の公共交通機関としての役割

 岡崎さんは、タクシーに“無線”が許可された経緯を思い起こしてほしいという。

「戦後の電波法によって、電波は国民に広く開放されましたが、大部分の利用は警察や消防といった公共機関が占めていました。比較的早い時期からタクシー会社に利用が許可されたのは、公共的な役割が認められたことが大きいと思います。当時からタクシーには地域公共交通機関として、社会に貢献する役割や責任が求められていたということです」

 もちろん、連合会が解散しても、タクシー無線そのものがなくなるわけではない。

 連合会自身も任意団体として生まれ変わり、業界内の調整役や課題の解決策を見いだす役割を果たす道などを探っているという。

 岡崎さんは、タクシー無線がつないできた「公共性」の理念を、今後も守っていってほしいと願っている。

(AERA dot.編集部 池田正史)

著者プロフィールを見る
池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

池田正史の記事一覧はこちら