内部告発が続く鹿児島県警本部

 中願寺氏は憤って続ける。

「きちんと令状も示しておらず、私も嫌疑の内容すら理解できていない。それに携帯電話を隠そうともしていないのに、暴力で差し押さえるというのは明らかに違法捜査だ。しばらく手の痛みも続いたが、その後連日続いた取り調べで、病院に行けなかった」

 その後、県警は中願寺氏の取り調べを始めた。これまでAERA dot.で報じてきたように、心臓疾患の持病がある中願寺氏は、福岡県警福岡南署での取り調べ中に発作を起こして、床に昏倒したこともあった。だが、県警は救護措置もせず、その後も取り調べを続けた。

 冒頭のように中願寺氏は藤井被告の訴訟がひと段落した後、携帯電話を強引に取り上げられたこと、心臓疾患にもかかわらず取り調べを強要されたことなどについて、県警の「違法捜査」として刑事と民事の両面で訴えをしていく考えだという。

前生活安全部長は裁判で争う方針

 一方、県警は「ハンター」から押収したパソコンにあったデータなどをもとに、警察情報を札幌市内のジャーナリスト、小笠原淳氏に郵送して漏らしたとして、県警の前生活安全部長、本田尚志被告(60)を国家公務員法違反容疑で5月に逮捕した。本田被告は、同法違反で起訴された。

 ジャーナリストに内部告発をした情報を、メディアへの強制捜査で押収したデータから見つけ、それをもとに告発者を逮捕するというのは前代未聞だろう。

 本田被告は鹿児島簡裁での勾留理由開示手続きで、
「県警職員が行った犯罪行為を、野川明輝本部長が隠蔽しようとしたことが許せなかった」
 と動機を述べ、今後の裁判も「公益通報だ」として争う構えを見せている。

 中願寺氏は本田被告の事件について、
「メディアに強制捜査をかけて、証拠のデータを押収して立件する。こんなことは許されない。私が予定している刑事や民事の訴えでもその点を、追及したい」
 と話す。

県警についての新たな「内部告発」も

 ハンターでは7月16日から、鹿児島県警についての新たな「内部告発」だとして、警察官のストーカー事件の報道を始めている。中願寺氏が言う。

「このストーカー事件は、藤井さんでも本田さんでもない人物からの内部告発であることがはっきりしている。寄せられた内部文書には野川本部長の決裁印まで押されていた。鹿児島県警は藤井さん、本田さんを逮捕して幕引きをはかったが、そうはならなかった。県警はどこまで腐っているのか」

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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