都知事選での演説では多くの市民が押し寄せた(撮影=小山歩)

従来の「劇場型」とはちがう

 行政学者で鹿児島大学客員教授の有馬晋作氏は、議会との対立構造を打ち出すなど、一般の人々に分かりやすくドラマチックに見せる政治手法をとる「劇場型首長」について長年研究してきた。小池百合子氏や元大阪府知事・大阪市長の橋下徹氏、そして安芸高田市長時代の石丸氏がその典型で、高齢男性が多い地方議会に閉塞感を抱く市民の支持を得やすいという特徴がある。

 だが有馬氏は、都知事選での石丸氏の姿に、従来の「劇場型」とはちがう新鮮さを感じたという。

「石丸さんの演説は、市長時代とは打って変わった、淡々としたものでした。幅広い層の支持を得るためには、批判や攻撃の色を強めないほうがいいと考えたのかもしれません。ビジネスパーソン出身という経歴も『普通の人』『クリーン』といった印象につながり、都民には受けたのかなと思います」

 街頭でスマートさをアピールする一方で、ネット上には市長時代の切り抜き動画があふれかえる。舌鋒鋭く市議たちを追及する姿は、良い意味でのギャップとして作用したと、有馬氏は見ている。

「『普段は物腰柔らかな人なのに、一生懸命議会と戦っていたんだな』と、ますます応援したくなるよう働いたのではないか。過去にもSNSを駆使する候補者はいましたが、過激な発言や行動でバズりを狙うのではなく、市長時代の実績という信頼できるアピール材料を用意していたことで、初めて大量得票につながったケースです」

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