また、いつもと違っていたのは、おふたりが英国へ出発される前に、上皇ご夫妻を訪れてのごあいさつがなかったことだ。
昨年のインドネシアご訪問の際は、出発前と帰国後にそれぞれ仙洞御所を訪ねている。皇太子時代も、海外訪問の前と後が「慣例」だった。
さらに1月1日の「新年祝賀の儀」にあたって、両陛下の長女愛子さまをはじめ他の皇族方は、ごあいさつのために仙洞御所を訪れている。
しかし、両陛下のご訪問はなかった。
「新年は忙しいでしょう」というお気遣い
この「変化」について宮内庁の関係者らは、上皇ご夫妻が陛下と雅子さまを気遣ってのことだったと明かす。
「元日の天皇陛下と皇后陛下は、明け方からびっしりと祭祀や宮殿行事の予定がつまっておられる。上皇ご夫妻がおふたりを気遣い、新年のごあいさつはなし、ということになったと聞いています」
昨年12月、22歳の誕生日を迎えた愛子さまが仙洞御所を訪ねた際も、愛子さまは帽子を着用していなかった。
天皇の侍従を経験した人物は、こう話す。
「上皇さまは90歳、上皇后美智子さまは89歳におなりで、ご体調も万全ではない。訪問客をお迎えするのにも体力を要します。慣習にこだわらず、あいさつの回数を減らすことで、双方ともにご負担を軽減できます。お帽子なしでというのも、形式にこだわらず、親しい家族として顔を見て会話を交わしたい、というお気持ちもあったのかもしれません」
皇室は皇族の数の減少と高齢化が進む一方で、公務や宮中祭祀などの負担をなかなか軽減できずにいる。そうしたなか、令和の皇室は伝統を守りながら、新しい形を模索しているようだ。
(AERA dot.編集部・永井貴子)