訪問中だったインドから夜中、極秘裏に出発し、ウクライナのキーウ中央駅に到着した岸田文雄首相ら。政府専用機に乗り込んでいた航空自衛隊の職員も「総理は戻らない。そのまま帰ってくれ」と告げられ驚いたという(写真提供・内閣広報室)

 さらに現在は、ロシアによるウクライナ侵攻のためにロシアの上空が飛行できなくなっている。欧州にはアラスカ方面へ迂回する必要があり、通常より2時間ほど余計に時間がかかっていることが、現場を悩ませているという。
 

「岸田総理は戻って来なかった」

 公式行事などの日程はしっかり決まっていても、思いもしなかったことは起こる。

 2023年3月21日、岸田首相がウクライナを電撃訪問し、首都キーウでゼレンスキー大統領との首脳会談が実現した。

 この直前、岸田首相は19日から22日の日程でインドを訪問。政府専用機には、前出の永野さんも乗り込んでいた。

 そして、インドで予定されていた岸田首相の日程が終わったが、岸田首相がなかなか戻って来ない。実はそのとき、極秘にチャーターした民間のビジネスジェット機でウクライナへ向かっていたのだった。

「我々も当然、電撃訪問は知らされておらず、『総理は戻らない。そのまま帰ってくれ』と言われて。私の任務のなかで、総理不在で運航をしたのは初めてでした」
 

 そして「VIP専用」というイメージがある政府専用機には、在外日本人を救援する役割も担っている。

 2013年1月にアルジェリアで起きた日本人の拘束事件では日本人7人と9人の遺体を、16年7月にバングラデシュ・ダッカであったテロ事件では7人の遺体とその家族などを運んでいる。

「たとえば今ならイスラエルですが、常に世界情勢を見て、海外にいる邦人を救うために待機をしています。そうした部分も知っていただけたらうれしいですね」

 と市橋さんは話す。
 

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