エリザベス英女王の国葬への参列を終え、政府専用機で英国を出発する天皇陛下と皇后雅子さま。王室の国葬や戴冠式の際には、世界各国から賓客の航空機が空港に集中する=2022年9月19日、ロンドン、スタンステッド空港

 そして、海外の王族の葬儀など、「依頼」が突然やってくることもある。

 2022年の英国・エリザベス女王の葬儀に天皇、皇后両陛下が参列された際、政府専用機の副操縦士として携わった機長の市橋正樹(42)さんは、

「先輩からは、どこの国の王族の容態が良くないといったニュースが流れたら急な弔問運航の依頼が来る可能性が高いので準備するように、と教えられました」

 と話す。

両陛下も搭乗する政府専用機内部に設けられた報道関係者用の「一般区画」。民間機のプレミアムエコノミー仕様で85席あり、無線通信も利用可能(写真提供・防衛省航空自衛隊)

世界各国の航空機が集結した英女王の葬儀

 定期的な運航はないが、要人を乗せているだけに到着時間の「厳守」が求められる。

 英国に向かった両陛下を乗せた政府専用機が、ロンドン郊外のスタンステッド空港に到着した際、空港には英国の王室関係者が出迎えた。

 市橋さんが話す。

「気象条件が悪かろうが、出発が遅れようが、安全かつ『定時』に到着しなければいけません。到着後のセレモニーの準備をして待っている相手国の関係者を待たせるわけにはいきませんし、早く着いても『もう着いたのか』と相手国をバタバタさせてしまいます」
 

 両陛下が参列したエリザベス女王の葬儀には各国の要人500人が、秋篠宮ご夫妻が出席したチャールズ国王の戴冠式では2200人が、世界中から英国に集まった。

 市橋さんは、当時の空港の様子をこう振り返る。

「世界各国から一斉に、王族や国賓の乗った航空機が集結するわけです。スタンステッド空港やヒースロー空港などには膨大な数の航空機が着陸してくるため、万が一の事態が決して起こらないよう身構えましたし、慎重な操縦が求められました」
 

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