報告会で発言する伊藤詩織さん(撮影/編集部・野村昌二)

 性被害を実名で告発した伊藤さんの勇気ある行動は、性被害を受けても泣き寝入りしないという「#MeToo」運動のうねりを、日本社会にも巻き起こした。

 この日、登壇した伊藤さんの代理人を務めた西廣陽子弁護士は、こう言った。

「うねりの根底には、性被害に遭われた方々の嘆きがあったと思います。嘆きというのは、諦めきれないからこそ出てきたものです。その嘆きが怒りに変わり、日本における#MeTooに変わっていったと、いま感じています」

 一方、伊藤さんは四つの民事裁判で勝訴したが、そのうち2件は損害賠償が支払われていないという。伊藤さんはこう言った。

「こうした司法の穴があって、私たちが生きている社会の中で、ジャスティスを勝ち取るのは本当に大きな問題だと思います」


 裁判には多額の費用がかかる。性被害に遭った時、1人に背負わせないためにはどうすればいいか考えることも必要だと訴えた。

 いまジャーナリストとして活動している伊藤さんは、自身の性被害の調査に乗り出していく姿を自ら記録したドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」を制作。映画は、1月に米国で開かれたインディペンデント(独立)映画の祭典「サンダンス映画祭」の国際長編ドキュメンタリーコンペティション部門に出品された。同映画祭は、インディペンデント系の映画祭では世界で最も権威があり、同部門での出品は日本の監督作品で史上2作目だ。個人として性暴力サバイバー側の視点も入れたという映画について、伊藤さんはこう思いを語った。

「私が経験した裁判、そして事件のその後をドキュメンタリーとして形にしたので、みなさまに届けたいというのが今の一番の願いです」

(編集部・野村昌二)

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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